2019年5月10日金曜日

コラム7足め 〜専業母ちゃんだって大変なんです〜

朝日新聞 地域コミュニティ紙

我が街かわら版 

コラム『ウタ唄いの母ちゃん』
7足め

〜専業母ちゃんだって大変なんです〜




約一年振りとなった先月のライブ。

持ち時間60分の中に
歌いたい曲を目一杯詰め込み、
満席となったお客様を前に
歌手として立つ喜びを久々に味わった。

信頼するバンドメンバーの演奏を背に、
文字通り音を楽しみながら
自分の声が会場を突き抜けてゆく爽快感。
育児の傍ら
音楽活動する難しさを痛感したこの数カ月だったが、
終わってしまえば次はいつ歌えるだろうか、
ということばかり考えていた。

息子が一歳を過ぎた頃から
近所の児童館に通っている。
せっかく児童館で顔見知りになっても、
保育園に空きが出て
職場復帰してゆくお母さんが後を絶たない。
私は出産前から子供が三歳になり
幼稚園に上がるまでは一緒にと決めていた。
だが保育園の空きがなく、止むを得ず仕事を休み、
幼稚園に入れるまでの間、児童館に通っている
という人が大半を占めるのが現実だ。

仕事と育児の両立の疲労感は半端ないものだ。
しかし保育園に入れると、
家で教え切れない日常生活を保育園で学んでくれるし、
働くことで気持ちの切り替えができ、
子供に付きっきりより楽だと言う人も多い。

いずれにせよそれぞれの苦悩や本音はあるのだが、
今私の最大のストレスは、
育児に対することよりも自分の時間がほぼ無いことだ。
今回のライブもそうだが家族の協力が必須である。
このコラムを書く時も決まって夫に息子を託し、
近所の喫茶店で珈琲を啜りながらパソコンに向かう。
その数時間がどれだけ貴重か。

それでも最近、
息子は会話に急に接続詞が加わり出し、
ウドンを箸で掴めるようになり、
私より電車の名前を言えるようになっていた。
音程は微妙だが歌だって口ずさめるようになってきた。
そんな、私にしか気付けない息子のミリ単位の成長は、
育児と対峙する自分への最高のご褒美だ。

幼稚園まであと一年。
今は息子といる時間を何より大切にしたい。
だがライブが始まってすぐ、
息子が「かぁちゃーん」と言いながら
手拍子をしていたと夫から聞いた。
そんなこと聞いたら、
またすぐ歌いたくなっちゃうな。

フナクボ香織 エレキギターを弾き語るオンナ